成果事例
半年後の体力測定結果に見るビーナスにおけるADLの維持・向上の傾向
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今回のビーナスレポートでは、前後編に分けて弊社をご利用いただく皆様のADLの特徴と、その結果をもとに設計した運動プログラムで、どのようなADLの変化が起きたのかについて分析しています。
「前編」では、事前に仮説をたてた年齢別の体力測定値に対して、弊社のご利用者様のADLのがどのような特徴を示すのかについて整理しました。
→年齢別平均と比較するビーナス体力測定結果まとめ
「後編」の今回は、ビーナスのご利用者様の特徴をもとに設計した運動プログラムを半年間実施していただくことで、ご利用いただく皆様のADLにどのような変化がおきたのかについて、対象となる計506名のご利用者様の体力測定の数値をもとに分析してみました。
すると、なんと5つの運動項目すべてにおいて、5~8割のご利用者様のADLが維持・向上していることが判明しました!
各項目の年齢・性別による特徴について、詳しく見ていきましょう。
高齢者は1年に0.5~1%ずつ筋力が低下する、と言われています。
そこで今回の分析では、半年経過した際の数値の変化が
-0.5%より低いもの→低下
-0.5%以上のもの →維持・向上
として、数値を算出させていただいております。
体力測定実施要項
体力測定の5項目の詳細は以下の通り。
【握力】
全身の筋力の指標。足は肩幅に開き、握力計が体に触れないよう、人差し指の第二関節が直角になるように握る。左右交互に2回ずつ計測し、最も良い数値を記録。
【立ち上がり】
下肢の筋力の指標。測定用の椅子を利用。足を肩幅に開き、踵を引いて地面にしっかりつける。計5回の立ち上がりの総時間を記録。計測回数は2回。
【開眼片足立ち】
静的バランス能力の指標。両手は腰にあて、挙げている足が地面についたり、支持足に触れたり、バランスが崩れたら終了。測定回数は2回、それぞれの足で記録。
【タイムド・アップ・アンドゴー】
総合的運動能力の指標。椅子から立ち上がり、3m離れたコーンを回って椅子まで戻ってくるタイムを計測。計測回数は2回。
【ステッピング】
敏捷性の指標。床に30cm幅のラインを引き、椅子に浅く腰掛けた状態で足裏を地面につける。両手で椅子を持って体を安定させ、合図と同時にラインをまたぐ形で足を開閉する。20秒間のうち、足がラインの内側に戻った回数(往復回数)を記録。計測回数は2回。
体力測定実施回数
5項目の体力測定を実施している7つの事業所、計994名の測定結果のうち、3回以上実施している方483名の、1回目(利用開始時)と3回目(半年経過)の結果をもとに分析を行う。
年齢、性別、および四肢の麻痺の有無をもとにした分布は以下の通り。
※ビーナスのご利用者様には「~65歳」「91歳~」の2つの年齢層も存在するが、マニュアルに沿った測定が困難になってきているため今回のデータでは省略している。
半年後のADLの維持・向上率について
以下のグラフは、性別と各年齢において「維持・向上」したご利用者様の割合を100%表示したグラフである。
※青系統は男性、赤系統は女性。
握力
全身の筋力の指標となる【握力】。
性別と麻痺の有無による数値平均は以下の通り。
・男性・麻痺なし 57.7%
・男性・麻痺あり 72.5%
・女性・麻痺なし 56.9%
・女性・麻痺あり 90.8%
もともと、すべての年齢層において年齢別平均を大きく上回る数値を記録している「握力」だが、半年経過後の維持・向上率もすべての年齢層において5割を超えており、マシントレーニングによる全身の筋力増強に一定の効果が認められることが分かる。
立ち上がり
下肢の筋力の指標である【立ち上がり】。
性別と麻痺の有無による数値平均は以下の通り。
・男性・麻痺なし 76.9%
・男性・麻痺あり 95.0%
・女性・麻痺なし 72.5%
・女性・麻痺あり 66.6%
ビーナスにおける計測では、残念ながら全ての年齢層において、世代別平均を下回る数値を記録している「立ち上がり」。
しかし、半年後の測定結果を分析したところ7割以上の方について測定結果の維持・向上が見られ、日々の運動プログラムに取り組んでいただくことにより、下肢筋肉の増強や、日常動作である「座っている状態から立ち上がる」ことが容易になっていることが分かる。
開眼片足立ち
▼右足
▼左足
静的バランス能力の指標である【開眼片足立ち】。
性別と麻痺の有無による数値平均は以下の通り。
(開眼片足立ち・右)
・男性・麻痺なし 51.9%
・男性・麻痺あり 55.8%
・女性・麻痺なし 53.6%
・女性・麻痺あり 35.0%
(開眼片足立ち・左)
・男性・麻痺なし 48.4%
・男性・麻痺あり 46.7%
・女性・麻痺なし 57.3%
・女性・麻痺あり 19.2%
ビーナスにおける計測では、全ての年齢層において、世代別平均を大きく上回る数値を記録している「開眼片足立ち」。
しかし、維持・向上率という観点においては、全5種の体力測定の中でもっとも低い伸び率となった。
特に麻痺ありの方については、試行回数(対象者)が少ないものの、なかなか数値を伸ばしきれておらず、今後の課題が残る結果となった。
タイムド・アップ・アンドゴー
総合的運動能力の指標である【タイムド・アップ・アンドゴー】。
性別と麻痺の有無による数値平均は以下の通り。
・男性・麻痺なし 61.4%
・男性・麻痺あり 90.0%
・女性・麻痺なし 62.4%
・女性・麻痺あり 68.3%
ビーナスにおける計測では、残念ながら全ての年齢層において、年齢別平均を下回る数値を記録している「タイムド・アップ・アンドゴー」。
しかし、「立ち上がり」同様、半年後の体力測定においては、6割以上のご利用者様に数値の改善が見られることが分かった。
「歩く」という動作を容易にすることにより、日々の生活をより安心して暮らしていただくことができるはずなので、特に維持・向上に努めていく項目と考えられる。
ステッピング
敏捷性の指標である【ステッピング】。
性別と麻痺の有無による数値平均は以下の通り。
・男性・麻痺なし 74.7%
・男性・麻痺あり 90.0%
・女性・麻痺なし 86.1%
・女性・麻痺あり 71.7%
ビーナスにおける計測では、全ての年齢層において、世代別平均を下回る数値を記録している「ステッピング」。
こちらも「立ち上がり」や「タイムド・アップ・アンドゴー」同様、半年後の体力測定結果では大きく数値を伸ばすことができており、全5種の体力測定項目の中で、もっとも伸び率の高い項目となった。
特に、もっとも対象者の多い「女性・麻痺なし」において、86%の方に維持・向上が見られることで、前編において判明した「女性はバランスや敏捷性が伸びやすい傾向」がより強く裏付けられる形となった。
測定結果に関する総評
冒頭でもご紹介させていただいたように、5つの体力測定項目全てにおいて5~8割のご利用者様のADLが維持・向上していることが分かりました。
特に、年齢別平均をに届かなかった【ステッピング】【立ち上がり】【タイムド・アップ・アンドゴー】の3項目についての伸び率が高く、7割を超える結果となっております。
これは、「日常生活を安心して送れるようになって欲しい!」という想いのもと、弊社が力をいれて取り組んでいる「体幹の強化や複数の筋肉を動かす運動プログラム」によって、ご利用者様のADL(特に日常生活において重要な複合動作のADL)の改善につながっている、ということであり、非常に励みになる分析結果となりました。
※運動プログラムの設計のために、ビーナスをご利用いただく皆様のADLの特徴を整理した結果は以下の記事をご覧ください。
ビーナスでは、1人でも多くのご利用者様に「もっと運動したい!」と思ってもらえるよう、ご利用者様お一人お一人に寄り添いながら、安全で効果の高い運動プログラムの設計に努めてまいります。
今後とも、よろしくお願いいたします。