成果事例
褥瘡(床ずれ)に対する灸治療の効果と治療経過について
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ビーナスでは、サービス力向上のため、「成果に対して根拠ある仮説を立て検証すること」を大切に、ノウハウの蓄積とブラッシュアップを続けています。
今回は、『Venus Value Award 2021 事業開発課 鍼灸師部門』の発表を一部抜粋し、褥瘡(床ずれ)に対して灸治療を行った経過と効果の有無に関する事例についてご紹介させていただきます。
「Venus Value Award」とは、ビーナスが年に1度実施している、成果=Value(ビーナスがお客様に約束する価値)の発表会です。審査員には、各専門分野の先生をお招きし、厳正なる評価・審査を行います。
ビーナスに通ってくださるご利用者様の日々の変化や、事例を共有する場であるとともに、ご利用者様の生の声や仲間が努力した結果を感じる場でもあることから、多くの学びを得る機会としてスタッフに好評のイベントです。
灸治療は褥瘡(床ずれ)に効果があるのか?
灸治療とは、よもぎの葉を粉末状にしたもの(もぐさ)に火をつけ、燃焼による温熱効果と、よもぎに含まれるチネオールの作用により、血流を促進、リラックス効果を得ることができる治療です。
※昔の灸は、もぐさを皮膚に直接乗せて焼いていましたが、現在は小さく筒状にまとめた刺激の少ないものになっています。
▼お灸の効果
- 血流の促進
- 鎮痛作用
- リラックス効果
今回は、褥瘡(床ずれ)でお悩みのご利用者さまのご自宅へ訪問し、灸治療を行った経過を見ながら、灸治療の効果についてご紹介させていただきます。
褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。一般的に「床ずれ」ともいわれています。
参考:褥瘡について | 日本褥瘡学会
http://www.jspu.org/jpn/patient/about.html
治療経過
初回訪問時(2021年6月)
臀部の皮膚が破れ、肉が完全に露出している状態
(ステージⅢ)
【治療内容】(週1回:20分)
周辺組織に対して、壊死組織と肉芽組織の境に施灸
【期待される効果】
温熱効果により周囲組織の血流促進や自然治癒力亢進による皮膚の再生
3ヶ月経過(2021年9月)
傷口周囲の灰色がかった部分が消え、傷の内側に少しづつ皮膜が張り出す。
ただし、中央には赤い亀裂があり、完全な白色期には至っていない状態。
2021年10月末
傷口周囲の灰色がかった壊死した細胞と瘢痕化(※)した細胞の切除手術を受ける
※瘢痕(はんこん)細胞:傷口を埋めるために突貫工事で作られた質の悪い細胞で伸縮性が悪い細胞。健康な細胞とくらべて身体の動きを阻害してしまう
5ヶ月経過(2021年11月)
手術で切り取られた三角形の傷跡がピンク色の真皮で覆われており、回復が持続している
灸治療は褥瘡(床ずれ)の回復を助けることができる
灸治療の経過を見てみると
- 温熱効果による血流改善により損傷部位の治療促進を図れること
- 温熱効果により身体面と精神面の緊張を緩和、リラックス効果を得られ免疫力向上を得られる
の2点が明らかになりました。
ただし、褥瘡(床ずれ)には
- 外科的原因:皮膚の汚れや湿気など
- 内科的原因:体型や栄養、健康状態など
- 環境的原因:介護力や適切な体位変換の有無
という3つの要因があるとされており、どれかが欠けてしまうだけでも、治療の効果が半減してしまいます。
清潔衛生や体位変換など、褥瘡(床ずれ)の改善に関する知識をさらに提供し、環境を整えていくサポートをさせていただきたいと考えています。